毎年防災訓練を実施し、避難マニュアルもきちんと整備している。それでも「本当に有事のときに、社員が体を動かせるのか」という不安が拭えない、という総務・安全管理のご担当者は少なくありません。訓練当日は指示通りに動けても、それは「今日は訓練だ」と分かっているからこそ落ち着いて動けている面もあります。実際の火災や地震、不審者対応など予期せぬ事態が起きたとき、同じように冷静に動ける保証はどこにもありません。マニュアルを配り、年に一度の訓練を終えれば、対外的な説明は成り立ちます。しかし担当者として本当に確認したいのは、いざというときに社員の体が実際に動くかどうかではないでしょうか。この不安は、決して気にしすぎではなく、担当者としての責任感の表れです。今回は、その不安を少しでも減らすための「防災訓練・BCP動画」の作り方についてお伝えします。
マニュアルが読まれない理由と、映像が体に残る仕組み
文書のマニュアルは、分厚くなるほど、実際の有事にはほとんど読まれません。理由は単純で、パニック状態や煙が充満した状況で、ページをめくり、文字を読んで理解し、それから行動に移すという工程を踏んでいる余裕がないからです。緊急時、人は頭でじっくり考えるより先に、体が覚えている動作を優先して動きます。マニュアルは平常時に「理解しておく」ものとしては有効ですが、有事の行動そのものを支える道具としては限界があります。
映像は、この「体で覚える」部分を助けてくれます。避難経路を実際に歩く映像を繰り返し見ることで、頭の中に経路の映像記憶が残ります。消火器の使い方を手元アップで見た記憶は、いざというときに手が勝手に動く助けになります。文書が「知識」を届けるのに対し、映像は「反射」に近い部分に働きかける、という違いがあると考えてください。だからこそ、マニュアルをなくすのではなく、マニュアルと映像を役割分担させることが大切です。
作るべき動画の種類
BCP・防災訓練の映像は、目的ごとに複数の短い動画に分けて作るのが効果的です。
- 避難経路と集合場所を実際に歩いて見せる動画。カメラを持って実際に歩き、曲がり角や階段、扉の開け方まで見せます。
- 消火器やAEDの使い方の手元アップ動画。全身を映すより、手元の操作を大きく見せることで動作を覚えやすくします。
- 安否確認システムの操作画面録画。スマートフォンの画面をそのまま録画し、実際にタップする様子を見せます。
- 初動対応の判断フロー動画。「まず何を確認し、誰に連絡するか」を短い寸劇形式で見せると記憶に残りやすくなります。
- 過去の訓練記録映像を振り返りに使う動画。詳しくは次の項目で説明します。
訓練そのものを撮影する価値と、多拠点・多言語への展開
訓練の様子を撮影しておくことにも大きな価値があります。撮影した映像を見返すと、参加者本人が気づかなかった動線の詰まりや、判断の遅れといった改善点が見えてきます。また、その映像は翌年の教材としてそのまま使えますし、「訓練を実施した」という証跡としても機能します。
複数拠点を持つ企業や、外国人技能実習生を受け入れている現場では、同じ映像に多言語の字幕をつけて展開する方法が有効です。海外拠点があれば、現地語字幕をつけた同一素材を使い回すことで、拠点ごとの温度差をなくすことにもつながります。
更新が必要なもの、視聴管理、費用の目安
映像は作って終わりではありません。オフィスのレイアウト変更、避難経路の変更、担当者の異動や連絡先の変更があった際は、その都度更新が必要です。ここを放置すると、映像自体が誤った情報源になってしまいます。
視聴管理も検討したい項目です。誰がいつ視聴したかを記録しておくと、社内での安全教育の実施状況を把握できますし、万一の際に安全配慮義務を説明する材料になり得ます。ただし、この記録の法的な扱いについては、必ず自社の法務・安全衛生部門にご確認ください。
費用は、内容の本数や撮影規模によって幅がありますが、手元アップや画面録画中心のシンプルな構成であれば比較的抑えられ、複数拠点でのロケや多言語字幕を含めると規模に応じて費用が上がる、というのが一般的な考え方です。詳細は制作会社に個別見積もりを依頼するのが確実です。
よくある失敗例として、一度作った映像を数年放置してしまい、オフィス移転や増床で避難経路が変わっているのに、古い映像のまま使い続けているケースがあります。撮影当時は正しかった内容が、いつの間にか誤った案内になってしまうのです。また、あれもこれもと内容を詰め込みすぎて長時間の映像になり、結局誰も最後まで見ないというケースも少なくありません。1本あたり数分程度に区切り、必要な部分だけをピンポイントで見返せる構成にしておくことをおすすめします。
防災訓練・BCP動画の企画や制作についてご相談がありましたら、お気軽にお問い合わせください。
